空飛ぶ農家のヨメ

先週はアウェイな1週間でした。もちろん、すべて「再生可能なエネルギー」や「農村の活性」なんかに関係する内容ばかりで、本当に濃い1週間でした。


アウェイ初日は京都。「地球環境学研究所」という所に行ってきました。ここは、その名の通り、地球環境を守ったり良くしたりするための研究をするところ。私はこの春から、この研究所のプロジェクトに参加させてもらっていて、近々今年度の中間発表があるとのことで、これまでの研究や活動を参加メンバーで話し合いました。

研究の大きなテーマは「対話による地域活性」。どんなに素晴らしい研究や政策も、そこに住む当事者の人の思いや理解があってこそです。阿蘇地域は世界農業遺産に認定されましたが、「それ何?だから何か変わるの?」という地元の困惑に対して、「変えるのは自分たち。ここに住んでいる私たちがどうしていきたいのか」という問いかけを続けています。でもこれは阿蘇に限ったことではなく、日本の地方(都市も同じなのかもしれませんが)、人に任せて来たこの国の住民が、少しでも「自分事」として地域のこれからをとらえて欲しいと願っているからです。地球環境研究所で様々な分野の研究者さんと議論をしながら「対話による地域活性」のあり方を研究し、それを阿蘇に持ち帰れたらなと思っています。


なんとこの研究会で、小中高の同級生と偶然の再開!いやぁ、世間は狭いですね。楽しくなりそうです。


そして火曜日から木曜日までは、「北海道で一番小さい村」音威子府村(おといねっぷ)へ。ドイツのバイオエネルギー村を実現させた立役者のマリアンネさんが講演をするということで、通訳にご指名を受けたのです。先日、知人から「北海道に草100%で発電したいと言っている村がある」と聞いて、これはぜひ行って見ねば!と思っていた矢先のご指名だったので、喜んでお引き受けしました。飛行機から見下ろすと雪景色。おぉ〜っ!さっそくテンションが上がります。


音威子府村(おといねっぷむら)に着くと、村長さんが自ら出迎えて下さいました。「村から一番お金が出てるのは何かを考えたら、光熱費と通信費だと気付いた」という村長さん。村で必要な電気や熱を村の資源で生み出すことを目指しておられます。が。課題もたくさんだし、村民はまだ何のことやら?と首を傾げている状態だそう。今回の講演会が、村民の皆さんにドイツ人教授の口を通じて村長の思いを伝える最初の機会だとか。打ち合わせから熱っぽい、でもにこやかでそして茶目っ気のある村長さん。第一印象から、「ここならきっと何かが起こる!」と感じた場所と出会いでした。


そして翌日、村民を対象とした勉強会が開かれました。50人を優に超える参加者が集まりました。人口770人のユーンデ村がドイツ初のバイオエネルギー村になれたのだから、人口800人の音威子府村が日本初のバイオエネルギー村になるのも夢ではないはず。ドイツ初のバイオエネルギー村が誕生するきっかけを作ったのも、当時の村長さんだったそうですから、意欲もユーモアもある村長さんがいるこの村で、日本初のバイオエネルギー村が誕生しますように!



それだけではありません。講演会の前に村を案内して頂いたのですが、農地や草地だけでなく、「村営の高校」にも連れて行って頂きました。そこもまた刺激的でした。人口800人強の村に高校があるってすごいなぁ。しかも!!美術と工芸の高校なんです。文化度たかすぎ。
1年生はノコギリやカンナの使い方や手入れの仕方から習い、2年生では小さめの家具を、そして3年生は卒業制作として、実家に置くための家具をデザインから。ガラス板や金属も含め、材料は全て村が買ってくれるのだそうです。
置き場所や用途を考えることからはじめることで、ユーザーの気持ちになって
デザインすることを覚えるとのことでした。
最近では遠方からの入学も増えていて、一番遠いのは鹿児島から来ている子。
でも学校の雰囲気や理念を見ていたら、うちの子たちにもいいかも、と
本気で思えるような、そんな高校でした。
モノづくりの技術や楽しさを教えてくれる村立の高校。素晴らしすぎます。音威子府村、要チェックです!


そして帰る日の朝、朝風呂に入りました♪ポカポカ♪
木のチップで加温してると思うとなおさらあったかい♪今年の2月に導入したというチップボイラーはドイツ製でした。チップを貯めておく倉庫も含めて約6千万。でもこのままのペースなら年間450万の経費削減につながるそうで、「経済効果抜群(^_^)b」と担当者の方もニコニコしてました。いいね、北海道。きっとまた来ることになるでしょう。


金曜日は終日、東大弥生講堂。
「日独バイオマスデー」という超マニアックなシンポジウムなのに、会場がほぼ埋まってる!すごい時代になってきてるのかも!?南阿蘇村で検討している事業にヒントを持ち帰るべく、朝から晩まで参加しました。

9時から18時までの長〜いシンポジウムが終了。懇親会が始まったものの、このサイズのビールをドイツ人に出すとは…(^_^;)日本は何でもミニサイズ、と思われるかもですね(笑)写真はドイツ領事館の食糧農林担当のケスラーさん(右)と、同窓でしかも同じ教授にお世話になったシュテファン(左)やっぱり世界は狭いです(^o^)


バイオマス発電の大きな可能性に胸を時めかせながら実家に戻り、テレビをつけたとたんに流れて来たニュース。川内原発の再稼働に「地元と合意しました」って!?反対してる人が多数いるのに。大人として恥ずかしすぎて子供たちに説明できない・・・。日本人として恥ずかしすぎて外国の人に説明できない・・・。

唯一の被爆国が世界最悪の原発事故を起こしたのに、どうして変わらないんだろう?痛い思いをしているのは私たち自身なのに…。反対して争うのは好きじゃないから、再生可能なエネルギーという「新たな選択肢」をつくることに注力してきたけど、それじゃ間に合わないのかもしれない。地球温暖化が原因かは知らないけど、自然災害の多いこの国で、「安全」なんて有り得ない。なんとか、しなきゃ。政治だって社会だって、「おかしいと思うなら変えられる」という事実を、きちんと子供たちに見せてあげたい。どうせ何をしても変わらないから、と諦めるような大人になって欲しくないから。という悶々とした思いで、守りたい子供たちの元へ帰りました。


阿蘇に戻った昨晩は、義父の誕生パーティーでした。義理の妹家族も来て、賑やかな晩。子供たちは自作の輪ゴム鉄砲で的当てをして大盛り上がり。大人はすき焼きを囲んで焼酎。なんか…いいなぁ。こんな日常の中のちょっとしたハレの日。義祖母に向かって「生んでくれてありがとう」の挨拶も良かったです。ザ・家族♪

家族を守るためには、単に再生可能なエネルギーを進めることに注力するだけでは間に合わないかもしれない。なんとかしなければ。希望もたくさん見えましたが、大きな課題を突き付けられた、濃厚な1週間でした。