豊かさについて思うことの多い週です

沖縄から熊本に戻った翌日、熊本朝日放送(KAB)の開局25周年記念イベントとして開かれた「熊本の未来を考える 〜食と農から見える明日の熊本〜」というフォーラムに出させて頂きました。熊本では2/28の13時からKABで放送されますo
(^-^)o報告文はいつも長くなってしまいますので、ご興味のある方だけ読んで頂ければ幸いです。



パネリストは蒲島知事、辰巳琢朗さん、発酵学の第一人者・小泉武夫さん、そしてファーマーERI。司会はテレビ朝日スーパーJチャンネルのキャスター渡辺宜嗣さん。登場する予定じゃなかったくまモンがサプライズで駆けつけてくれて、辰巳さんや渡辺さんが大喜びでした。



主な話題は、熊本の豊かさと、「熊本のあか」、農業の原点、という3つだったように思います(もちろん、他にもいろんな話題が出ましたが)。


熊本は人口も経済指標も全国のほぼ真ん中。それなのに、農業生産高が全国で4位。病床数は3位。看護師の数が5位。出生率も5位。(違ってたらごめんなさい)つまり、食べ物がおいしくて、子供が産みやすくて、福祉も充実した県だ、ということのようです。実感はしていますが、そのようなランキングを知ったのは初めてでした。


小泉先生によると「今の日本の食料自給率を見たら、熊本に住んでいる人が最も安全」とのことで、これからもっと人が集まる可能性もある場所、とのご発言でした。これが話の面白い小泉先生。


それほどポテンシャルの高い熊本ですが、全国的に見ると、印象が薄いのも現実。くまモンだけは突出してますが。確かに「商売下手な県民性かも」と思うこともあるのですが、それは裏返すと、必死に商売しなくてもやってこれた豊かな県とも言えます。

確かに「経済成長」(=経済的に豊かになる)を考えたら、このポテンシャルをどう経済につなげるか、というのは熊本県の課題で、それには「あか」をこれまで以上にうまくアピールするのが良いであろうというアドバイスを頂きました。「熊本のあか」は会場の人ほとんど皆さんが知っていると答えるほど県内では浸透していますが、全国的にはたいして知られていません。トマト、イチゴ、あか牛、鯛、車エビなどの「赤い食材」は、「鹿児島の黒」と好対照のキャッチフレーズ。他にも赤酒もあるし、何なら赤十字も発祥の地だし(食と福祉の充実を謳う)、ハートの赤だし。それなら赤ワインが欲しいところだね、とワイン通の辰巳さん。

なるほど、と納得する反面、「暮らしやすさ」(=もともとの豊かさを守る)という意味では、商売下手なりに暮らせてきた社会を保てないものかな、という思いも抱きました。子供を育てながら、地域社会が温かく見守ってくれている心地よさを日々感じているので、経済性の物差しだけで測ると失いかねないこうした地域の文化や景観や生態系を子供たちにも残してあげたいなぁとつくづく思うわけです。競争が全て悪いとは決して思っていません。でも、過度な競争が生んだ疲弊も痛感している現代社会。その中で、あまり得意でない商売で勝負にでるくらいなら、「保つ」ことの大切さを徹底的に追うことで、他県より住みやすい場所になるという手もありなのではないかと。

熊本県って、他所と何が違うの?何が特別で何が特産品なの?」という問いに「何も違わないよ。特別なのは水。特産品はないけど、日々の暮らしが豊かだよ」と胸を張って言えちゃうような。全国ランキングなんて、正直言ってどうでもいい。県知事は「農業生産高で北海道に次ぐ2位をめざしたい」って言っていて、知事のお立場からは当然の目標だと思いますし、農業者としてもそこを目指すべきなのかもしれません。でも、母としての思いはちょっと違う。むしろ全然違う。その思いをきちんとフォーラムで伝えることができたかどうかは分かりません。でも、私自身がフォーラムを振り返ってみて改めて感じたことを書いてみた次第です。


私にとって熊本は熊本。他県と比べるものでもなければ、ましてや世界と比較するものでもない。ここに骨をうずめる覚悟で来た以上、ここが住みよい場所であり続けるよう、一県民としてできることは何かを考えていきます。ほぼ、同じ内容を朝日新聞のコラムに書きました。






オマケ画像。準備中の写真です。メークさん付きでした。化けられてたかな?農家のヨメにメークさんがつくなんて!と我ながら可笑しくなったので載せちゃいます。




もひとつオマケ。準備体操中のくまモン。あまりに唐突に体操を始めたので思わず笑ってしまいました。ステージ裏の緊迫感をほぐしてくれたのかも。熱烈なくまモンファンではないですが、さりげない気遣いは、さすがくまモン




そんな示唆に富んだフォーラムから帰ると、ドイツから荷物が届いていました。ちょうど1年前に遊びに来たドイツ人ファミリーからサンクスギフトです。懐かしいドイツのお菓子も嬉しいですが、手作りのアルバムやジグソーパズルもあって感激。ドイツ人はこういうところがある国民性で、もちろん皆ではありませんが、人を喜ばせる工夫ができる人たちにたくさん出会って、お金では表せない感謝の気持ちや相手に対する深い気持ちの伝え方を大いに学びました。


さて。さらに少し長くなりますが、カードに書いてあった内容が衝撃的で。息子さんがいて、去年小学校に入学する年齢だったのですが、「1年遅らせた」とのこと。確かに少し扱いが難しい少年で、うちにいる時も子供たちに対して攻撃的(本人は遊んでいるつもり)だったりしたのですが、別に発達障害があるとかではなく、ただ人より少し荒いという程度。それでも、「1年長く幼稚園に行ったことで、彼もしっかり学校に行く準備ができた気がする」と友人。そんなことができることにまずビックリ。子供の個性や成長のスピードに合わせてあげることができる社会って、なんて素晴らしいんだろう、と感動しました。

なんでも西欧が良いわけではないのですが、陸続きで多くの国があるので、「多様性」に対する許容量が大きいのはヨーロッパの羨ましいところ。日本ももう少し「画一的」から自由になれると、いろんな人がラクになるんじゃないのかなぁ?という気がしますがいかがでしょうか。



で、さらにその日の晩、隣に住む叔父宅でご飯を食べた時のこと。当然、叔父宅にはオモチャがないのですが、子供たちはカーテンレールを見つけ出して、カーテンフックを銃弾に見立てて飛ばす射撃ゲームを開始。テレビもゲームもない我が家の子供たちが、発想豊かに育ってくれているのをみてしみじみ嬉しくなりました。




その翌々日。名前を挙げられない経済界の要人が我が家を訪ねて下さりました。友人だろうが要人だろうが、何の変哲もない家庭料理でおもてなしするのが我が家流。単身赴任をされているとのことで、地元でとれた野菜ばかりで作ったメニューをとても喜んで下さいましたo(^-^)o

経済を動かす立場にある方なのですが、特に熊本に赴任してからは幸せのあり方について思うところが多い日々とのことで、法人化さえしていない我が家の家族経営やライフスタイルについて、うんうんと大きく頷きながら聞かれていました。予想以上に楽しい時間でした。さぁ、お次のお客さんがそろそろ来る頃かな。



要人と入れ違いに、うちの集落を題材に「景観保全」に関する卒業論文を書いた九州大学の学生さんが、指導教官の先生と訪ねてきてくれました。



論文はまだこれから読ませてもらいますが、卒業制作の「提案」がステキ。田畑を拡大して効率化することにより、少ない人数でも機械で耕作できるようにしてきたこれまでの流れに対して、田畑が小さくても人数を増やして栽培面積を保つ、という提案。教育の一環として、あるいは都市と農村の交流の場として。

現実的かどうかはさておき、若い学生さんの夢が詰まった「comection 」プロジェクト案、楽しく聞かせてもらいました。集落の皆さんにも聞いて頂ける機会を設けたいと思います♪



その日の晩、ご近所の家族と3軒で「世界の果ての通学路」を鑑賞しました。私と夫は映画館まで観にいき、ぜひ子供たちにも見せたいと思っていた作品です。時には命の危険さえ犯しながら(ゾウに遭遇したり急斜面を通ったり)、片道2時間以上の通学路を通うケニアやインドやモロッコやアルゼンチンの子供たちの話し。学ぶことに対する並々ならぬ意欲と喜び。そして将来の夢。



九州大学の先生に聞いた話はその真逆でした。最近では大学の評価が厳しくなり、出席率の悪い学生や進路の見えない学生の指導は、担任教官の義務だとか。え?相手は大学生でしょ?と耳を疑いました。自分の意志で入った大学でたとえやる気が出ないとしても、それでどうするかは本人の問題なはず。そもそも大学なんて別に行かなくたっていいんだし。勉強したいことがある人が、進んで学びに行くのが大学。やる気が出ないなら、早いうちに違うことにチャレンジしたっていいわけで。オイオイ、そんな状態じゃ、世界で必死に学ぼうとしている小学生たちに申し訳がたたないでしょ。なんだかなぁ…(*_*)


そんなこんなで、日曜日からの数日で、いろいろ思うところがあって、頭の整理ができていません。そのためか、文章も整理できていません。すみません。最後に、去年と一昨年、稲刈り後に「こづみカフェ」(田んぼでのオープンカフェ)をやった場所の現在をご紹介します。工事後も田んぼにはなりますが、子供たちが遊ぶ場所のすぐ横がこの深さの水路なので、危なくてカフェはできなさそうです。蛍も出なくなるでしょう。「効率化」ってやつです、ハイ。農業者(数が減ってる&高齢化がすさまじい)の作業は大幅に楽になるはずなので、こういう工事を否定することも決してできません。でも…



昨晩から地響きや地鳴りと呼ぶであろう、ゴーゴー、ズシンドシンと阿蘇の山々が唸りを上げていて不気味。家の中でも障子がガタガタ揺れます。怒ってるみたい。