世界農業遺産に認定されました!

全国ニュースでも報道されたようなので、思ったより知られているようですが、この度、阿蘇(熊本)、掛川(静岡)、国東半島(大分)の3地域が新たに「世界農業遺産」として認定を受けました。認定式が終わって阿蘇に戻ったのは土曜日。遅ればせながら、これまでの経緯と共にご報告します。

熊本で人気のイタリアンレストラン「リストランテミヤモト」の宮本さんが我が家に来たのはちょうど1年くらい前の事。8年間イタリアで修業した彼は「熊本の農村は世界的に見ても魅力的だ」という思いから、国連食糧農業機構(FAO)が認定する”世界農業遺産”への申請を地元紙で提案したのが去年の4月。特に阿蘇は可能性が高いと考え、阿蘇の農家を積極的に訪ね歩いていた頃でした。海外の農村も見てきた私たち夫婦なら同じ思いだろう、という事で訪ねて下さったのです。「農業を続けることで景観を守りたい」という思いで就農した私たちに異論があるはずもなく、すぐに意気投合して、まずは勉強会の企画から始めたのでした。夏の間に、県知事が乗り気になったり、市町村長さんが入った協議会ができたりと取り組みが本格化。私たちは農繁期だったのであまり力にもなれず、たまに電話で相談する程度でしたが、秋になって熊本市内で開かれたシンポジウムに阿蘇の農家として登壇して以来、関わりが増えていきました。昨年末に県庁が申請書を提出。2月に国連機関から視察が訪れ、その時に英語が話せる農家として呼ばれました。素材としては良く、阿蘇はあまり問題なく認定されるだろうと甘く考えていた日本の関係者の認識に反して、視察団の意見は手厳しいものでした。このままでは認定できない、と。世界的に見て、焼き畑は環境に負荷をかける農業という位置づけ。野焼きも焼き畑と変わらないではないか、という見方をされてしまったのです。野焼きにスポットを当てすぎて、その他の多様性について十分伝えきれなかったのも印象を悪くした原因でした。

何はともあれ、せっかく本格的に準備したのに中身を伝えきれなかったのは悔いが残る、ということで、事務局にかけあって再度プレゼンの機会を与えて頂きました。それが4月のローマ。田植え準備中でしたが、家族や研修生や県庁職員さんの協力を得て、強行スケジュールにて渡伊。そこで十分に阿蘇の価値を伝えることができたことが今回の認定につながったと言っても過言ではありません。無理してでも行って良かった!帰国してからも、県庁と私たち民間人が「最後までやれることは全てやる」という気持ちで取り組みを進めました。阿蘇域内の賛同者を増やすこと、知事が阿蘇に出向いて2か所で住民説明会、メディアでの報道、等々。かなり官民ともに盛り上がった状態で今回の国際会議を迎えました。

今回は知事、言いだしっぺのけんしんさん、そして私が3人でプレゼン。他の7候補地は、行政の方のみ、もしくは研究者の方によるプレゼンでしたから、シェフによる食文化の話、そして農家自身による農業や阿蘇への思いを加えた3名でのチームプレゼンは大いに喜ばれ、高い評価を得ることができました。そして認定の発表。2月のマイナス評価を覆して見事に認定されました!審査員の皆さんに、「民間主導の初めてのケース」として今後の展開にも期待して頂いています。今回の認定は、本当にスタートです。世界的に「重要である」というお墨付きを頂いたこの場所で、農業だけでなく「農村」という一つのまとまりとして、今後も住み続けたい、訪れたい場所で居続けられるような取り組みをしていきたいと思います。意気込みは他にもいろいろあるのですが、私たちとしてはまず農業をこれまで通りしっかり続けていくことが全ての基本になりますので、まずは今シーズンも美味しいお米を作れるよう、農作業に励みたいと思います。