最後はデンマーク

デンマークに着いた翌日、電動車いすで生活している母の友人宅を訪ねました。長いリポートになりますので、ご関心のある方だけお読みくださいね。

彼女の名前は「リス」。子供たちが喜んだのはご想像の通りです。ただし、帰り道に「あれ、ウサギさんだっけ?」と聞かれたのには笑いました。

それはさておき、病気によって重度の障害を持つようになった彼女と初めて会ったのは、私が5歳の時。今のサンタと一緒です。当時の私も「リス」という名前に反応し、重装備の電動車いすを興味津々で眺めていたことでしょう。一緒にあやとりをして遊んだのを覚えています。以来、毎年クリスマスカードをやりとりし、行ったり来たりで5年に一度くらいのペースで会っている仲ですが、農家になってからはなかなか訪ねられなかったので12年ぶりの再会です。

当時、彼女は「遠くに行ってみたい」という思いから偶然日本を訪れ、母の知人から紹介を受けて、我が家に泊まりに来たのでした。

リポートしたいことはいろいろあるのですが、一番お伝えしたいのは、何と言っても彼女の生活の「普通さ」。もちろん、普通に過ごせるはずのない身体なのですが、24時間の介護つきで、喉から酸素を吸入しながらも、施設ではなくごく一般的な賃貸住宅に住んでおり、仕事をしたり、友達を招待したり、旅行に出かけたり、私たちと変わらないような生活をしているのです。


ヘルパーさんの質の高さにも会うたびに感心します。必要な時に必要なだけの介護をし、リスが彼女らしい暮らしをできるよう、サポートしているのです。昨日のヘルパーさんは元・小学校教師をしていたという二児の母。学校の統合によって職場を失ったので、今の仕事に就いたそうです。24時間シフトですが、その分、勤務日数が少ないので、まだ幼い子供たちと過ごす時間をより多く取れるのだとか。もちろん、それを可能にしているのは、勤務日には子供を見てくれるご主人や義理のご両親がいてくれるからとのことですが、教職に就いていた頃より、今の働き方の方が気に入っていると言っていました。

家は当然バリアフリー。でも、ため息が出るほど綺麗でお洒落なんです。地震がない国なので、美しい置物や飾り物がどこの家もいっぱい。うちの自然児たちが何か壊さないかといつもヒヤヒヤしています。案の定、昨日はお皿を1枚割ってしまいました。デザートのアイスをもらいたいあまりに勢いよく飛びついてきたのです。ただヨーロッパは、食洗器を使うからなのか、他の理由があるのか分かりませんが、同じ食器が何セットも揃っている(10〜20は当たり前)家が多いので、「1枚くらい大丈夫よ」と許してもらいました。


昨日のメニューは、ちらし寿司と肉じゃがと和風サラダとお味噌汁。ドイツ留学中に考案した「ケーキ型でつくる押し寿司」は、少ない材料で作れて見た目もよく、誰にでも喜んでもらえるので外国で料理を作る時の定番です。お米は、リゾット用やプディング用のmのを使います。お酢はピクルスの液を使うと一番ちかい味にできるのですが、今回は粉末を持ってきていたので簡単でした。肉じゃがに使うような薄切り肉がこちらでは売っていないので、ベーコンで代用。ベーコンを使うとダシがなくてもコクが出るのでこちらも定番です。お味噌汁に「僕が取ってきた貝を入れてよ」と三男がしつこく迫ってきましたが、食べられる貝なのかさえ怪しかったので、丁寧に断った上で、貝入りの味噌汁もほんの少し作ったら、「最高に美味しい!」とご満悦。無理やり味見をさせられましたが、別にたいした味じゃありませんでした(笑)。今のところお腹に異変はありません。無理強いは良くない、無理強いは。

ところで、訪ねる友人たちへのお土産に毎回悩むのですが、世界農業遺産の国際会議が開かれた能登でこじゃれた「和ろうそく」を見つけて取り寄せたので、今回は悩まずにすみました。伝統的な和ろうそくに、和風の柄がついていて本当にお洒落なんです。どこの家庭でもロウソクはよく使いますから、ぜったい喜ばれます。しかも、自然素材でできているので、これぞ「最も手軽な再生可能エネルギー」!同じお店で、米ぬかで作った和ろうそくもあったので、そちらもお土産に持ってきています。名前がまたいいんです。「トモーレ」(笑)。うまい!ただし、あげてみて気づいたのですが、いわゆる洋風のキャンドルスタンドに合わないんです。鉄製のロウソク立てをいくつか用意していたのですが、次回は必ずそれとセットでプレゼントしたいと思います。

明日から、今回の旅のメインイベントであるサムソー島を訪ねたら、旅もほとんど終わり。どうかこのまま怪我や病気をせずに帰国できますように。