再生可能なエネルギーで100%まかなっているサムソー島

10年かけてデンマークのサムソー島を100%再生可能なエネルギーでまかなう島にし、2008年にTIME誌の「環境ヒーロー」に選出されたソーレン・ハーマセンさん。その彼が、私のために丸一日時間をさいて下さいました!

最初に連れて行ってもらったのは、風車。彼の自宅のそばにある風車で、現在は使われていませんが、「僕はこの風を受けて育ったんだ」とソーレンさん。この風車は、現在稼働していませんが、必要とあらば再稼働もできるとのことでした。次に訪れたのが風力発電機。「真下に立って見上げてごらん」と言われたので、やってみました。「これが自分たちのものだったらうるさくもないし景観も乱さない。他人(企業)のものだったらうるさい上に目障り。人間の感情ってそんなものでしょ」って。確かに(笑)。

年間約5000人もの来訪があるというエナジーアカデミーにて、スタッフの皆さんとランチ懇談会。日本からもたくさんの政治家や研究者、市民団体の人が来るそうですが、「農家は初めて」と言われました。今度は農家仲間をたくさん連れて訪れたいです。

皆さんと話してみて分かったこと。時間がかかるのは当然だと腹をくくって、気長に地道に「目指し続ける」しか道はないのだという事。先進国において「エネルギーの自給率」を少しずつでも上げていくこと自体がとてつもなく大きな意味を持っているのだという事。国や文化が違っても、同じことを目指している人がこんなにたくさんいるのだという事。抽象的だけど、そんな印象でした。もちろん、けっこう具体的な、実践的な話もしたのですが。

私のリクエストで、ワラを燃料とした地域暖房施設も見せてもらいました。地域暖房施設は、人口4200人の島内に4か所あるそうですが、利用者がつくった組合(というより有限会社に近い)が運営しているのはここだけ。ワラとススキだけを燃料にしているのもここだけ。コメ農家なうえに、阿蘇の草原を守るための「ススキ発電」に取り組んできた私にとっては最も興味がある施設でした。農家はワラやススキをこの施設に搬入して、目方によって販売します。もちろん高く売りたいですが、熱の利用者でもあるので、あんまり高いと熱の利用料に響く。そのバランスを自分たちで見つける。それはたしかに時間かかりますよね。余談ですが、ヨーロッパで栽培されているエネルギー用のススキは、日本が原産みたいです。日本ではエネルギー資源とは見られていませんけどね。


日照時間が少ないので、発電は風力が頼り。島内で必要な電力よりも多く発電して、売電しています。熱需要はワラや木のチップで7,8割をカバー。島なので、何もかもが船で運び込まれるのですが、その燃料をバイオガスでまかなえるようにしたいのだそう。現在は、カーボンオフセットにより、輸送に使われている燃料が排出する二酸化炭素を、風力発電によって補っています。



ところで、見学の途中で信じられないことが起こりました。デンマークのサムソー島で、よく知っている人に遭遇。世の中が狭いことは知っていたけど、ここまでとは・・・。

遭遇した彼女はゲッティンゲン大学の教授。ドイツで初の「エネルギー自給集落」を考案し、そして成功に導いた人。10年前に完成前の「初代バイオエネルギー村」訪ねて以来、日本にも3回ほどお呼びしていて、彼女の講演をきっかけにしてNPOを作ることになりました。その彼女が、たまたま休暇中にヨットでサムソー島を訪れ、風が強すぎて先に進めないので予定を1日延ばして滞在していたとのこと。奇跡的な出会いでした。

再生可能なエネルギーで100%まかなっているデンマークのサムソー島で、そのプロジェクトを実現させた張本人に案内してもらっていたら、同じく再生可能なエネルギーで集落のエネルギーを100%作り出すプロジェクトを実現させたドイツ人の教授と会った。これはきっと何かの巡りあわせに違いない。何かを暗示しているのかもしれない。とにかく、鳥肌がたつくらいのあり得ないタイミングで、集うべき人が自然に集った感じ。ものすごい瞬間でした。

あちこち案内して頂いたお礼に、彼からのインタビューに応じ、夕食に和食を作りました。そんなお礼じゃとても足りないくらいの大切なことを教えて頂いたので、南阿蘇の「エネルギー自給率」を高めることで、恩を返したいと思います。