デンマーク報告③

3日目は5か所も訪問!ぜんぶ報告するとえらく長くなりそうなので、「Wow!」と思ったことを2つ書きます。

1つは、バイオマス地域暖房施設。なんと熱効率が108%!つまり、100の原料から、108のエネルギーが得られるという意味だそう。ん!?木とかワラを燃やしてお湯をつくるんですが、燃焼する時に出たガスでさらにお湯をつくることで、熱効率が100%を超えるのだそうです。分かったような、分かってないような(^_^;)再生可能エネルギーの第一人者である飯田哲也さんがびっくりしてたので、きっとすごいことなんだと思います(笑)


地域暖房施設というのは、大型のボイラーで沸かしたお湯をパイプで一般家庭などに送って、暖房や給湯につかうシステムのこと。日本の田舎だと、各部屋暖房が主流なので、廊下に出ると寒いし、時には2階までお年寄りが灯油タンクを運ばなければならない。家の断熱性をあげて、熱のロスを少なくした上で家中を温めれば、ぜったいにもっと家が快適になるはずなんだけどな…。パイプの敷設コストがヨーロッパの10倍以上かかるそうで、むしろバイオマス暖房施設を小型化して、各家庭のセントラルヒーティングを目指す方が現実的なのだそうです。ふむふむ。なるほど。

もう1つ、「すごっ」と思ったのは、計測機器。電気や熱や水道の使用量を測るメーターは、いまだに人が回って読み取っているのが現状。都会の事情はよく知りませんが。でもこれって、とっても非効率&人件費が膨大。今日、工場で見せてもらった計測機器(メーター)は、センサーや超音波や通信技術を駆使して、エンドユーザーが電気や熱の使用量を確認できるだけでなく、自動的にデータが中央の管理センターに送られて課金されるとのこと。デンマークでは電気料金が高い(1kWh30円弱!)ので、電気の使い過ぎは家計に響くだけでなく、「エネルギーの効率化と省エネ」を目指す国の方針にも悪影響を及ぼします。ですから最新のメーターは、電気の使用量が多くなってくると、警告さえ出すのだそう。導入コストがいくらかは、恐ろしくて聞けなかった視察団ですが、地域の資源を活かした発電や熱供給事業を目指す今回の参加者にとって、このシステムはまさに「WOW」という感じでした。初期費用は上がるでしょうが、その効果はかなりプライスレス。近い将来、ローカルエネルギーだからこそ、効率的に計測し、また効果を「見える化」できる状況になれるといいなと思いました。


そして昨日から2回目のサムソー島に来ています。

必要な電気と熱をすべて再生可能なエネルギーで作り出している島。
10年かけてこのプロジェクトを実現に導いたのは、元・農家のソーレン。
人口4,000人の小さな島が成し遂げた大きな実績は、世界中から大きな称賛を受けています。


ワラを燃料とした地域暖房施設や、農家が所有している風力発電を見学したばかりでなく、ラムサール条約により保護されている渡り鳥の生息地を訪れて、すごーく満たされた気分。地元・南阿蘇でも、再生可能なエネルギーの割合がどんどん増えて10年後には100%に近付いているといいな!!

デンマークは2050年までに国中のエネルギーを再生可能なエネルギーに切り替えることを国家目標としているそうです。国家目標にはなっていない日本で、
どうしたら飛躍的に再生可能なエネルギーを増やしていけるのかについて、
移動中の船でも議論。ワインを飲みながらも議論。
デンマーク滞在もあと3日。糸口が見えるといいのですが。

最後に番外編。 私の人生に大きな影響を与えた女性と再会できたした。

障害を持った方の住宅ばかりを設計している母を訪ねて、35年も前に車椅子にのったデンマーク人女性が我が家に滞在しました。当時5歳だった私は、車いすに乗せてもらったり、あやとりを一緒にしたり。言葉の壁を越えて、楽しく過ごしました。

高校生の時に、母とデンマークを訪れた際、重度の障害者を持つ方々の施設を案内してくれました。部屋に入ると、きれいにカラーコーディネートしてあり花が飾ってありました。「この部屋の住人は、全盲なのよ」とスタッフの方がさらりと言ってのけた言葉に衝撃を受けました。「見えなくたって、感じることができるはずだから」と言いながら、飾ってある花の描写をしている姿を見て、なるほど、福祉ってこういうことか、としみじみ思ったのでした。


個人住宅の設計は母に任せ、私は人や自然に優しい町づくりの設計や社会づくりの仕事がしたい!と思うようになったのは、その時から。部活しかしていなかった私が急に勉強をはじめ、こんな勉強がしたい!というアツい志願書を書いて、慶応大学の環境情報学部に自己推薦枠で合格したのでした。彼女と会うために視察プログラムを1つスキップさせてもらってしまったのですが、せっかくデンマークまで来たのだから、会えて本当に良かったです。視察団の皆さん、すみませんでしたm(_ _)mありがとうございます。